体育館から学院長の声がかすかに漏れ聞こえる。
柚木と創始はもう誰も来ない門に1回だけ目をやるとドカッと桜の木の下に座り込んだ。
「多すぎなんだよ…」
2人でとか無茶苦茶だ…
そう微かに漏らすが声にならない。
「お疲れー!!!!」
声がしたほうに目をやると新平と久遠が走ってくる。
そしてそれぞれ2個づつ持っていたジュースを1個づつ放り投げて来た。
「お、ナイス」
「さんきゅ」

久遠と新平を加えて4人で桜の下に腰を下ろす。
見上げると薄紅色の花が風に誘われるたびに、その枝からヒラッと舞い落ちる。


「お菓子ほしいなぁ」
久遠がボソッとつぶやく。
「そういえば今年花見やったっけ?」
「やってねぇ」
コーヒーを飲みながら柚木が答える。
「なぁ!!!夜桜だよ!よ・ざ・く・ら!!!!」
うつ伏せになってジュースを飲んでいた新平が、ガバッ!!!!!っと起き上がり声を張り上げる。
「いいねぇ」
人差し指をピッと新平に向ける柚木。
「夜なら聖もいるし。うん、忍び込もうぜ」
「ヒャッホーイ!!!お菓子買わなくちゃな!!!ポッキーだろ!チョコクッキーだろ、んで、んで…
やっぱりポッキーだろ―――!!!」
「ポッキーばっかかよ!!!」
「何言ってんだよ、シュークリームだろ?クレープだろ…プリンにジャンボモナカに…」
指折り数える久遠にげんなりした表情の創始。
柚木は我関せずでコーヒーを飲み干す。
「んじゃ、ひじりんにメールしましょっとv」
新平は嬉しそうに携帯を取り出した。

「門限11時だからな…何時からすっか」
「7時には出ようぜ〜」


「ハイハイハイ!!!!」
新平が大きく手を上げる。
その姿を見上げるように三人が振り返る。
「はい、高屋くん」
「聖OKサインでました〜!!」
携帯のディスプレイをずいっと三人に向ける。


―― 夜桜で花見ですか?風流ですね。
OKです。詳しくはそっちで決めてください。 ――


「ウヒヒヒ。何かこういうのって久々だな」
携帯に「了解」と打ち込みながら新平が笑うものだから
創始は「そうだな」と相槌を打った。


「じゃぁ7時に玄関な。途中コンビニで買出ししようぜ」